司馬遼太郎の「明治という国家」によれば、横須賀製鉄所(造船所)は当時の世界的レベル
であるフランスのツーロン港の規模に近いもので、フランスから莫大な借金をして建設した
ものである。
ようやく工事の目鼻がついた時、上野介は鋤雲に「あのドックが出来上がった上は、
たとえ幕府が亡んでも『土蔵付き売家』という名誉をのこすでしょう」といったという。
幕府の命脈が尽きることを知っていた小栗は、ドック建設に幕府の名誉をかけたといえる。
このドックは、「明治国家の海軍工廠となり、造船技術を生みだす唯一の母胎となった」
のである。 |